【楽譜浄書】ソフト評論:Flat

1,959字

Flatとは

Flat

Tutteo社が開発・提供する楽譜作成ソフト。

Flatは、プロ仕様のツール群と美しくシンプルなインターフェースを融合した音楽記譜ソフトウェアです。作曲、共同制作、洗練された楽譜のオンライン公開まで、すべてを迅速かつ簡単に行えます。

対応

特徴

共同編集

複数人で同時に1つの楽譜を編集することができます。それぞれのパートをパート担当者が制作し、完成したら1つの楽譜として保存・共有できるのでバンドスコアの作成にも利用できます。

バージョン履歴

Note after note, all the modifications that you make on Flat are saved in your account. History allows you to restore your work at a precise moment and start over from there.
〈日本語訳〉 Flatで行った全ての変更は音符ごとに自動的にアカウントに保存されます。履歴機能を使えば作業を特定の時点まで復元しやり直すことができます。


使ってみよう

Flatは過去にも触ったことがあるがお遊び程度だった。

今回はウェブの無料版を使ってみる。内容は執筆時点のもの。

新規楽譜を作成

適当なタイトルを入力し、楽器にピアノを追加した。

1. 楽譜作成後の画面
1. 楽譜作成後の画面

画面上部のバナーに勧められたのでベータ版のインターフェースを適用した。 ツールバーが楽譜の上から左のサイドバーに移動するらしい。

デフォルトのフォントはOFLSMuFL準拠のBravuraとAcademicoだった。どちらもDorico用。

音符の入力

J.S.バッハ「インヴェンション第1番 ハ長調 BWV 772」の楽譜を作る。

普段はレイアウトから決めることが多いが、今回は音符の入力から始めた。

音符の入力には、マウス,キーボード,画面下部の鍵盤,MIDIが使える。

2. 音符入力後
2. 音符入力後

特に問題なく終えた。

記号の入力

お次は記号。 ソフトの検証のために自筆譜や初版譜に書かれていない補助的なものも含めている。

3. 記号入力後
3. 記号入力後

難なく入力できた。

さて、"Allegro moderato"も追加したいのだが、速度標語を追加するボタンがサイドバーに無い。 仕方ないので「アノテーション」で代替しよう。「レイアウト」タブからBoldにもできた。

4. 速度標語のテキストスタイルを変更
4. 速度標語のテキストスタイルを変更
5. 記号の衝突
5. 記号の衝突

記号の入力は終わったが、記号の位置や衝突が酷い。では自分で調整しよう。それっぽいボタンでも探してみるか。

な い

調整する方法が何も無いではないか。ヘルプセンターも見たけど無いっぽいぞ。

本当はスラーの向きとかアーティキュレーションの衝突とかを直したかったが、諦める。

レイアウトとスタイルの設定

まず、譜表ラベルの「グランドピアノ」を消そう。「楽器 > 楽器名」を空欄にしたらできた。

「レイアウトとスタイル」タブも見る。 スペースに余裕がありそうなので、五線のサイズも7.0mmから7.4mmに大きくした。 そして小節番号はItalicにし、音楽フォントはなんとなくSebastianに変えた。

んじゃ適用するか。

6. まさかの有料
6. まさかの有料

無料版の範囲でできるところまでは頑張り、とりあえず完成した(PDF)。

7. 完成
7. 完成

評価

記譜

音符や記号の入力の機能は概ね揃っており、ほとんどの楽譜は対応できる。

速度標語が用意されていないのはいただけない。 サイドバーの記号の分類も不自然に感じた。

浄書

自動浄書エンジンの精度が非常に悪く、記号の位置や衝突、スペーシングの大きな問題が全ての小節で見られる。これらを修正しようにも、音符と記号の調整やレイアウトの設定等、浄書に必要な機能が揃っていない。

再生

よく使われる楽器は揃っており、簡易的なミキサーとメトロノームが使える。

再生の際にアーティキュレーションが無視されてしまう。また、ピアノのような大譜表の場合、強弱記号は各譜表に入力する必要がある。

その他

Flatの特徴である「バージョン履歴」機能は、Microsoft OfficeやGoogle Workspaceのように時刻と差分、各バージョンのプレビューが表示され、わかりやすい。

無料版だと機能が大幅に限られる。だからといって有料版に加入する意味も薄いと思う。


感想

Flatに専門的な楽譜浄書は不可能だ。ただ楽譜を作成するにしても出力の質が非常に悪く、修正する手段も用意されていない。

ただ、スマホで楽譜を作りたい人にとってFlatはほぼ唯一の選択肢だ。他にFlatより優れている無料のスマホアプリ・ウェブサイトを見つけるのは難しいのでやむを得ないことではあろう。

とはいえ、粗悪な楽譜を出力するFlatは「どうしても」の理由がない限り使うべきではないだろう。Flatには「浄書」の視点からの改善を期待している。